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亥の子餅亥歳の母に参らしぬ


■ 鈴木　いげを
亥の子餅亥歳の母に参らしぬ
いのこもち　いどしのははに　まいらしぬ

≪ 解説 ≫

　小学生時代、
　亥の子石を突いて
　家々をまわった。

　石に縄を結び、
　「ここの屋敷は　よい屋敷･･･」と
　仲間で唱え、石で地面を打った。

　すると家の人が菓子などをくれた。

　亥の子は陰暦10月の最初の亥の日の行事、
　明日がその亥の子だが、
　収穫を祝い、子孫繁栄を願う。

　大人は亥の子餅をついて祝った。
　主に西日本の行事である。

選者及び解説は、坪内稔典（俳号：ねんてん）氏

◇出典：毎日新聞（季語刻々・2015･11･18）

ご参考①→ ■ 現代俳句協会ホームページ

ご参考②→ ■ 至遊さんの句あれば楽あり

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四谷にて鯛焼を買ふ出来ごころ


■ 能村　登四郎
四谷にて鯛焼を買ふ出来ごころ
よつやにて　たいやきをかう　できごころ

≪ 解説 ≫

　出来心はふと思いつく
　悪い考えや思い。

　鯛焼を買うことが出来心だったことは、
　行儀の悪い買い食いをしたことを指すのか。

　あるいは、病気で
　甘いものを禁じられていたのか。

　ともあれ、鯛焼を買うことが
　ちょっとした悪い思いつき
　だという発想がおかしい。

　ちなみに、
　鯛焼、今川焼、焼き芋、
　そしてホットドリンクの類いは
　冬の季語。

選者及び解説は、坪内稔典（俳号：ねんてん）氏

◇出典：毎日新聞（季語刻々・2015･11･17）

ご参考①→ ■ 現代俳句協会ホームページ

ご参考②→ ■ 至遊さんの句あれば楽あり

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愛たとえばこの鯛焼の重さほど


■ 寺田　良治
愛たとえばこの鯛焼の重さほど
あいたとえば　このたいやきの　おもさほど

≪ 解説 ≫

　鯛焼の重さくらいの愛って、
　どのよう愛か。

　つつましく、気楽で、ほのかに温かい
　愛だろう。

　それは、例えばダイヤモンドのような
　愛と比べる　と分かりやすいかも。

　つまりダイヤモンドよりも
　鯛焼を愛する心、
　そういう心が育む愛だ。

　句集「こんせんと」(編集工房ノア）からひいたが、

　「冬うらら　猫とおなじものを食べ」

　も良治さん。

選者及び解説は、坪内稔典（俳号：ねんてん）氏

◇出典：毎日新聞（季語刻々・2015･11･01）

ご参考①→ ■ 現代俳句協会ホームページ

ご参考②→ ■ 至遊さんの句あれば楽あり

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遊びゐるただの子供や七五三


■ 深川　正一郎
遊びゐるただの子供や七五三
あそびいる　ただのこどもや　しりごさん

≪ 解説 ≫

「ただの子供」がいいなあ。

七五三で着飾っている子どものそばで
普通の姿の子供が、たとえば
駆けまわって遊んでいる。

私はただの子供が好きだが、
時には着飾って特別な子に
なるのもいいかも。

実は、わが家では七五三の行事をしなかった。

貧しくて余裕がなかったのだが、
娘たちの特別な日を奪った気が
しないでもない。

選者及び解説は、坪内稔典（俳号：ねんてん）氏

◇出典：毎日新聞（季語刻々・2015･11･15）

ご参考①→ ■ 現代俳句協会ホームページ

ご参考②→ ■ 至遊さんの句あれば楽あり

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矢大臣見向きもせずに七五三


■ 茨木　和生
矢大臣見向きもせずに七五三
やだいじん　みむきもせずに　しちごさん

≪ 解説 ≫

　矢大臣は神社の随身門の神像だが、
　それを拝むこともなく
　七五三の一行が参拝している、
　という光景だろう。

　「見向きも」しないのを
　とがめているのではなく、

　率直な参拝ぶりを好意的に
　見ている。

　句集「真鳥(ﾏﾄﾘ）」(角川書店)の句だが、
　作者は

　「七五三船乗込みをして来たり」

　とも詠んでいる。

　こちらはたとえば
　島から船で来た
　ご一行だ。

選者及び解説は、坪内稔典（俳号：ねんてん）氏

◇出典：毎日新聞（季語刻々・2015･11･14）

ご参考①→ ■ 現代俳句協会ホームページ

ご参考②→ ■ 至遊さんの句あれば楽あり

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