月、地球、引力バランス、地軸、四季
毎日新聞(2010.3.8)の予録に、その日暮らしでは、気づかない話題が
取り上げてあった。
あの大騒ぎしたチリ地震つなみ騒ぎ。誰も1日中何らかの影響を受けたと
思われますが、あれで、1日が短くなったことはご存じだろうか?
たまには、68億人が肩寄せ合って生きているこの宇宙の奇跡に近い
微妙なバランスでの成り立ちに、目を向けてみませんか。
≪ 毎日新聞(2010.3.8)の予録 ≫
夏目漱石門下の寺田寅彦にこんな歌がある。
「好きなものイチゴ珈琲花美人懐手して宇宙見物」。
小さく甘酸っぱい果物から、一気に大宇宙へ飛んでしまうところが、なんともおかしい。
さすが物理学者らしい気宇壮大さである。
■ 前京都大学学長の尾池和夫さんも地球物理学者にして俳人だ。
その尾池さんに先ごろ、俳句に欠かせない四季がなぜ存在するのかという話を聞いた。
地球の自転軸が23.4度の傾きで太陽を回っているから、というのは中学生でも知っているが、
実は月の存在があずかって大きいのだという。
■ 月の質量は地球の1.2%。太陽系の中では、母惑星に比べ、不釣り合いに大きい衛星だ。
そしてこのサイズが絶妙の引力バランスを成り立たせている。
月がなければ地軸はぐらつき、安定した四季など望めなかったかもしれない。
俳句や和歌と月は切っても切れないが、なるほど深い因縁があったわけである。
■ チリで起きた大地震で地球の軸がわずかにずれ、おかげで気球の自転が速まり、
1日が100万分の1秒ほど短くなった可能性があるそうだ。
米航空宇宙局の研究者が指摘した。
深い因縁で結ばれた相方の身震いに月も気が気でなかったろう。
■ 一方で、地球の反対側からジェット機並みの速度で押し寄せた津波に自分が住む惑星の意外な
小ささを実感した人もあるだろう。
その被災地から食料や飲み水、医薬品不足の叫びが届く。
■ 微妙なバランスで浮かぶ惑星に68億人が肩を寄せて生きる姿は宇宙から見れば奇跡に近い。
仲間の苦しみに思いをはせ、最大限に手を差し伸べたい。
ここでもう一つ、物理学者の句。
「寅彦忌地軸傾け夕日入る」・・・(有馬朗人)
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